2016年8月2日掲載

「安全・安心」をキーワ ードに地域と世界を結ぶ

本学にセーフティマネジメント教育研究センターが誕生

「安全・安心」をキーワ ードに地域と世界を結ぶ

 1995年の阪神・淡路大震災は、兵庫県南部に甚大な被害をもたらしました。その後も2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震と国内の地震の被害は続き、近い将来には南海トラフ地震が発生するとも予想されています。世界に目を向けても台風や集中豪雨などの自然災害が後を絶ちません。

 2016年4月、本学に防災や危機管理に関する教育プログラムを提供する「セーフティマネジメント教育研究センター」が誕生しました。濱名学長が進める「安全・安心」をテーマに地域社会と国際社会を結ぶ取り組みが、また一歩進化を遂げた形です。


 センターの教員として教壇に立つ齋藤教授と村田教授は、ともに阪神・淡路大震災の経験をベースに防災・減災をライフワークとしてきた経歴の持ち主です。学長と両教授に、セーフティマネジメント教育にかける熱い思いを語っていただきました。

─ 大学教育の中で「セーフティマネジメント」に着目された理由を教えてください。

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濱名学長 関西国際大学は創設以来、地域との連携を重視するとともに、世界を見据え、特にアジアで活躍できる人材を育成することを目指してきました。近年は大学としていかに地域社会と国際社会をつなぐかということに着目しています。
 そうした視点で本学が拠点を置く三木市を見渡すと、「兵庫県広域防災センター」などの大規模な防災関連施設を地域資源として擁しているという強みがあります。他方、アジア各国の大学との交流の中で気づいたのは、国際的に安全で安心できる国として評価されている日本に学びたいというニーズです。
 こうした背景から国際会議等で呼びかけを行い、2014年にアジア各国の大学と日本の防災・防犯のノウハウを共有するコンソーシアム「Asian Cooperative Program(ACP)」が発足しました。
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 この流れを教育と海外貢献の両面からさらに強化するために開設したのが「セーフティマネジメント教育研究センター」です。センター長の齋藤先生には、以前から客員教授として防災に関する講義を担当していただいています。

齋藤教授 安全・安心をキーワードにした全学教育を提供するということは、実は他の大学ではなかなかできないことです。学長の情熱やバイタリティを全学で共有できる組織体制、きめ細かな授業ができる大学規模、防災関連施設が集積した三木という立地、そして海外の大学との連携関係という条件がそろった関西国際大学だからこそチャレンジできることだと思います。
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濱名学長 三木総合防災公園の県広域防災センターや県消防学校の整備責任者は、当時県の防災監を務めていた齋藤先生です。さらに三木には世界屈指の実大三次元震動破壊実験施設「E-ディフェンス」もあります。本学を訪れた海外の大学関係者をこれらの施設に案内すると、みなその規模と内容に驚き、非常に満足して帰っていきます。三木市における防災関連施設の集積は、大規模災害に備えるマネジメントとしてひとつのベンチマークになると言えます。

齋藤教授 三木に隣接する神戸にもさまざまな防災関連施設があります。セーフティマネジメント教育研究センターとしても、今後そうした施設と協力体制を構築し、学生が実習等を行えるような環境を整えたいと考えています。また防災体制の面で、田園地帯が多くを占める三木キ
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ャンパス周辺と、都市機能が集中した尼崎キャンパス周辺という多様な環境の中で学ぶことは大変貴重な事です。

濱名学長 兵庫県下では神戸が国際都市として広く認知されていますが、防災という点では実は三木も世界とつながるポテンシャルがあるのです。
 国際貢献といえば、村田先生は阪神・淡路大震災の経験をベースに国際的な防災・減災の推進にも関わってこられました。

村田教授 戦後日本が豊かになり、安全・安心は当たり前、その上でより快適な暮らしを求めていたのが、阪神・淡路大震災が起こった21年前の状況だったと思います。私も家族が犠牲になり、改めて「安全であ
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ること」の重要性を思い知らされました。震災後は、県の職員として齋藤先生とも一緒に復旧復興に関わる仕事に従事してきました。兵庫県は海外からもさまざまなかたちで支援をいただいたことから、我々が震災から得た教訓を国際的に伝えていこうという取り組みが地震の3年後から始まり、私自身は「アジア防災センター」「人と防災未来センター」「国際復興支援プラットフォーム」などの立ち上げに関わりました。

濱名学長 日本と海外の国々との防災体制や災害対策の違いも目の当たりにされているのではないでしょうか。

村田教授 東南アジアの被災地を訪問すると、インフラが整備されていない、災害対応の行政システムが未整備、予報警報などの災害情報がな
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いなど、安全・安心が十分には担保されていない中で、被災者が置き去りにされていることが多くあります。被災者に対するケアを行うとともに、被害を未然に防ぐ体制を構築することの重要性などについて、これまで国際会議等で発信してきました。
安全・安心は人間の根源的な欲求です。災害から命を守ること、被災後の生活を少しでも早く元に戻すことだという考えは世界共通のものです。

濱名学長 日本では大きな自然災害に伴うパニックや犯罪の発生は極めて少なく、諸外国の人々から敬意と賞賛の声が上がっています。我々にはこうした秩序ある社会の仕組み、そして阪神・淡路大震災や東日本大震災から得た教訓を海外に伝えていく責任があります。

─ セーフティマネジメント教育研究センターが果たす役割について教えてください。

齋藤教授 これからの時代を生きる若い人達には、自然災害を含めてあらゆる危機に直面したときにどのように行動できるかということが今まで以上に問われるでしょう。センターでは今後「防災入門」「セーフティマネジメント論」「国際防災協力」「コミュニティ防災」などの科目を順次開講していきます。来年度からは、専門教育とセーフティマネジメントをリンクさせた新しいコースを経営学科の中に開講し、村田先生に指導していただく予定です。濱名学長のアイデアで、関連する資格を取得できるような講座を行うことも計画しています。


濱名学長 安全・安心に関する知識は、本学3学部の学生が共通して考えるべき要素であり、現代人の教養コンテンツだとも言えます。本学が「KUIS学修ベンチマーク」として設定している能力はすべてセーフティマネジメント教育を通じて自然に養われます。
教育の切り口は「マネジメント」です。防災の専門家がいれば安全で安心できる社会がつくれるわけではありません。求められているのは全体のマネジメントができる人材です。東日本大震災では「津波てんでんこ」の伝承をベースにした学校教育が子どもたちの命を救い、児童8人が死亡した大阪・池田小学校の児童殺傷事件では学校の危機管理体制の脆弱さが指摘されました。災害や危機に対するマネジメントの欠如は、生死を分ける重大な問題です。


村田教授 安全・安心な環境づくりにどんなマネジメントが必要かという基礎的な考え方は、学生がどんな専門分野を学ぼうとも、また将来どんな職業に就こうとも必ず役に立ちます。


齋藤教授 本学ではグローバルスタディやACPなど体験型の教育プログラムが充実していますから、学生は教室で学んだ内容を海外でのサービスラーニングやリサーチの中で実際に試し、体験することができます。


濱名学長 ACPではこれまでインドネシア・ガジャマダ大学、ミャンマー・ヤンゴン大学、マレーシア・マネジメント&サイエンス大学と共同でフィールド調査を行った実績があり、今後もタイ・タマサート大学、マレーシア・ウタラマレーシア大学と連携プログラムを行うことが決まっています。
これから日本が交流を深めていくのは東南アジア諸国です。そうした国々を代表する大学の学生と問題意識を共有し、共通の話題を持つことは、本学の学生にとって非常にいい体験になると思います。


村田教授 私はマレーシアでのプロジェクトに関わっています。現地の水害が多い地域に暮らす人々は高床式の住居に住んで災害と共存してきましたが、最近の異常気象の流れの中で災害の規模が大きくなっており、新たな備えが模索されています。今後我々は多国籍のチームで現地調査を行いながら、各国の防災体制、災害対策の違いを比較して学び合います。日本人学生や海外の学生にとっても教育的な効果が高いと言えます。


濱名学長 本学は日本人学生を海外に派遣するプログラムだけでなく、海外の学生を三木キャンパスや尼崎キャンパスに受け入れて、災害と日本文化理解に関する短期プログラムも実施していますから、双方向の学びができるというメリットもあります。

─ セーフティマネジメントの学びは、国際貢献にもつながります。

齋藤教授 災害のニュースを見聞きし、自分も何か現地の手助けになることがしたいと考える学生も少なくないでしょう。気持ちはあっても実行するのは難しいものです。しかしセーフティマネジメントを学べば、防災・減災の基本的な知識を踏まえて自分に何ができるのかを考え、実行に移す力が身につきます。

ただし日本のノウハウをそのまま海外の他の国に押し付けてはいけません。現地の人々とともに考え、その国に適応させていくことが大切です。


濱名学長 東南アジアの国々で自然災害の犠牲者の多くは安全・安心教育を受けていない人や子どもたちです。たとえば海外の学生と協力し、「地震がきたら津波がくるから高いところに逃げろ」と伝える紙芝居を作成して現地の小学校をまわるような活動なら学生もスムーズに取り組めますね。


村田教授 国際貢献、国際協力というと、被災地に短期集中で物資を支援したり、調査を実施したりというケースが多いと思います。しかしそうした場合、モノがなくなったり、人々が引上げたりすると、現地には何も残りません。並行して、防災に繋がる知恵や知識を伝えていく活動が必要です。紙芝居や市民劇もそうですし、市民による防災訓練などであれば現地の人々の手で継続でき、効果が大きいかもしれません。


齋藤教授 安全・安心の基本は、命を大切にすることです。それも自分の命だけではなく、他者の命、特に弱い立場の人をどう守るかということです。私は安全・安心を学ぶことが他者への思いやりや共生社会への理解につながっていくと思います。
セーフティマネジメントは間口の広い分野です。本学の学生が「この大学で学んで良かった」と思えるような教育プログラムを提供していきたいと思います。

関西国際大学 学長 濱名 篤

セーフティマネジメント教育研究センター長 グローバル教育推進機構 教授 齋藤 富雄

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関西国際大学 学長
濱名 篤

セーフティマネジメント教育研究センター長
グローバル教育推進機構 教授
齋藤 富雄
兵庫県国際交流協会理事長
元 兵庫県副知事

人間科学部 経営学科 教授
村田 昌彦
元 人と防災未来センター研究部長

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